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第74回卒業証書授与式
3月1日(土)
第74回卒業証書授与式を挙行し、3年生302名が卒業しました。
保護者様にも卒業の姿を直接見ていただくことができました。
千葉明徳学園での3年または6年間が皆さんの糧となったのであれば教職員一同の大きな喜びとなります。
4月からの新しい生活でさらなるご活躍とご健勝をお祈り申し上げます。
本日はご卒業おめでとうございます!
<校長式辞>
日に日に日差しの暖かさが増し、春の訪れを感じる季節となりました。
本日ここに、多くのご来賓の皆様方にご臨席を賜り、第74回 卒業証書授与式を挙行できますことは、大きな喜びでございます。
ただ今、呼名された302名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして、本日、ご列席の保護者の皆様におかれましては、お子様のご卒業を、心からお祝い申し上げます。
さて卒業生の皆さんが入学した三年前を振り返ると、コロナの影響があった中での入学でした。2021年に、コロナによって一年繰り延べになった、東京オリンピック・パラリンピック2020が、無観客での開催となりました。コロナは、2023年にようやく5類に引き下げられ、コロナ後の様子が見え始めました。
世界情勢では、2022年に、ロシアによるウクライナ侵攻、2023年には、イスラエルのガザ侵攻が開始され、不安定な状況におかれました。
一方でICT技術では、2023年にChatGPTをはじめ生成AIが急速に普及し、人工知能が人間の知能を超えるシンギュラリティが間近に迫っていることを予感させられました。また、JAXAやアメリカの民間企業による月面着陸の試みは、月旅行がより現実化しつつあることを実感させられました。そして、大リーグの大谷翔平選手の活躍や、将棋の藤井聡太八冠の活躍があり、私たちに希望をもたらしてくれました。
思い返せば、皆さんが入学した三年前はコロナ禍にあって、学校生活もままならない中でした。入学して早々に、最初の学校行事であるはずの遠足が中止となり、その後、繰り返すコロナの流行の波に、学級閉鎖やオンライン授業が繰り返されました。また文化祭や体育祭の縮小や変更、中止に見舞われました。そうした中でも、「いつかこの苦難を乗り越えられる」という希望を持って学校生活を送っていたことと思います。そうした中で徐々にではありましたが、コロナ後の新しい日常を取り戻そうという歩みをしてきました。
二年次の研修旅行では、海外に行くことができませんでしたが、中高一貫コースは東北方面に出かけ、震災学習に取り組み、龍泉洞や猊鼻渓を訪れました。特進コースは北陸と京都を訪れ、白川郷や金沢での体験学習、京都での散策で留学生との交流がありました。進学・アスリート進学コースは沖縄に行き、平和学習で戦争の悲惨さを学び、ビーチでの体験やクラス別観光に取り組みました。コロナで中学校では修学旅行に行けなかった分、宿泊をともなう研修旅行は思い出深いものになったのではないでしょうか。
今年度の文化祭はメインテーマ「SDGs」で、「コロナ前の日常を取り戻そう」ということで、ほぼフルの内容で開催されました。文化祭の何日も前から、各教室では多くの生徒が放課後遅くまで準備に余念がありませんでした。オープニングのCMコンテストでは、それぞれのクラスの特徴がよく表現されていて、工夫を凝らした演出を見ることができました。クラス企画は、謎解き、お化け屋敷、サバイバルゲーム、トイストーリーマニア、縁日、食系と、それぞれ質の高い内容で大変充実していました。クラスのチームワークも一段と深まったことと思います。
三年生の体育祭では、午前中だけの開催となりました。それでも一人ひとりがみな一生懸命に取り組んでいた姿をうかがうことができました。そのことは、競技に参加していた人たちの真剣な取り組みの様子とともに、応援していた人たちの熱のこもった姿にも見てとることができました。そして三年生はとくに、明徳伝統の盆踊りで、みな浴衣姿で踊ったことが思い起こされます。三年次の体育祭は高校生活最後の大きな学校行事ということで、大事な思い出になったことと思います。
そして皆さんは今日この日を迎え、希望に満ちて新しいステージへと歩んでいきます。高校時代の三年間が、これからの人生に大きな糧となることでしょう。そしてこれからの皆さんはぜひ、千葉明徳の理念であります、「明徳を明らかにする人」、つまり、「行動する哲人」であってほしいと願っています。「行動する哲人」とは、皆さんにあらためて言うまでもなく、自らの力で世の中を切り開く人です。混沌とした世の中にあってこそ、そのような力が求められることと思います。
「行動する哲人」が切り開いていくのは、「公共」、つまりパブリックという場においてです。「公共」、「パブリック」という言葉からは、「国家」や「行政」を思い浮かべてしまいがちですが、国家や公的権力ということではありません。「国家」ではなく、また「私(わたくし)」、「プライベート」でもなく、「国家」と「私」の中間に位置しているものです。自由な意思を持つ個々人が集まって、新しい価値や新しい組織を作り上げていくことです。学校や医療・福祉が、その典型的なものといえます。
新しい公共を切り開くという意味では、二〇世紀の終わり頃からこれまで、CSR(企業の社会的責任)やNPO(非営利組織)など、民間の力による活動が推進されてきました。グローバル化の流れの中では、地域と世界を、国を介さずに直接結びつくという意味で、「グローカル」ということがいわれるようになりました。
そして今日、公共のあり方としてしばしばいわれるのが、「ウェルビーイング」です。「ウェルビーイング」とは、「幸福」「福祉」という意味ですが、それはただ、経済的価値を増大させるということではなく、より積極的に、自由な人間としての活動を通しての「自己実現」を尊重するという意味があります。
企業の「ウェルビーイング経営」としては、従業員に対しては、コミュニケーションや組織の活性化によってやりがいや達成感を見出す環境を整えたり、健康増進や福利によって職場への帰属意識を高めたりする取り組みをすることです。また顧客向けには、商品販売を通じての消費者の心の癒しや健康増進がテーマになります。いずれも健康や心の癒やし、あるいはやりがいや達成感を積極的に増進していく、ポジティブな意味あいを持っています。ウェルビーイングに価値をおく生き方こそが、これからの私たちが目指すべきものです。
そして次世代のウェルビーイングを実現するために、卒業生の皆さんにはぜひ、「行動する哲人」として、限りない自己の可能性を実現していってほしいと思います。これまでにない新しい価値を創造して広めていってください。
皆さんにとって幸多き未来であることをお祈りいたします。
令和6年3月1日
学校法人千葉明徳学園
千葉明徳高等学校
校長 宮下 和彦